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豊かな言葉⑬「ボランティアについて考える」

 

いくら偉そうなことを言っても、

どんなに素晴らしいことを書いても、

もしそこに自分の行動や覚悟が無ければそれは空しいことだ

ということを、一つの出来事を通して強く感じています。

 

それは今年の夏(8月12日)に山口県周防(すおう)大島町で、行方が分からなくなっていた藤本理稀(よしき)ちゃん(2歳)をボランティアで捜索に参加した大分県から来た尾畠春夫さん(78歳)が15日に山中で発見したというニュースを聞いた時でした。

大変失礼な話ですが、どこか他人ごととして聞き流し、思いのどこかで最悪のケースさえ予感していた事故でした。

理稀ちゃんのお母さんや理稀ちゃんが「帰る!」と言った時に一人で帰してしまったおじいちゃんの気持ちを考えると、確かに胸が痛むような気持ちになってしまいましたが、だからと言って自分が何か行動しようという気持ちは起こりませんでしたし、はなっから遠い所で起きた出来事であって自分の体力を考えても自分にできることではありませんでした。

そこに出向いて捜索に加わろうなんて非現実的な話だったのです。

ですからこの事故も結局は私にとって他人事でした。

 

東京から西へ約1,200km。

大分県の自宅で理稀ちゃんがいなくなったことを知った尾畠さんは、翌日もこの記事が新聞に載っていることに居たたまれなくなり、自ら現地に赴いてそこで理稀ちゃんを探そうと決意し、日頃から緊急時に備えて準備してあった衣料品や食料品を軽自動車に積んで現地へと向かったのです。

その後の展開は既に皆さまがご存知の通りですが、私がこの熱い思いに感動したもう一つのエピソードは、大分県津久見市で開局されている「海風ラジオ」という番組の中で取り上げられたもので、それは尾畠さんが以前に東日本大震災の災禍を忘れてはならないと訴えるために、大分から徒歩で福島を往復したというものでした。

これにはびっくりしました。

また、各地の被災地で現在もボランティア活動をして、『ボランティアの神様』と言われるくらいの方なんです。

 

これらを知るに及んで、ますます「私にはできない」という思いになったの事実ですが、一方、私ごとき者でも何かできないものかという気持ちになったのも事実です。

生まれつき、私は出来ない理由を探す癖があります。

考えてみれば、小さい時から何かにつけてそうでした。

改めて

「為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」 (為す=行動をとる)

<上杉鷹山(ようざん)・米沢藩の9代藩主>

という言葉の意味をかみしめます。

要は、そこに私の覚悟があるかどうかなのだと気付かされた出来事でした。

それにしても今回、希望の光が消えかかっていた小さな尊い命が助かったいう事実。

これより大きな価値と喜びはありません。

 

インドのカルカッタ(最貧民街)に生涯を捧げ、以前日本カソリック協会の招きで来日したことのあるマザー・テレサに、

ある人が「私もインドでボランティアをしたいがどうしたら良いか」と質問しました。

すると、テレサは

「インドに行って活動することだけがボランティアではありません。

あなたの隣りにいる同胞、差別的扱いを受けている人や障がい者、あなたの助けを必要としている人々があなたのカルカッタになるように生きなさい。」

と答えられたのです。

マザー・テレサだからこその生きた言葉ですね。

 

就労移行支援施設すずかぜ

施設長・講師 大城 豊

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